「あ、それオレのっ……ってかお前ブラック飲めねえだろ?何いきなりトチ狂ったかの様に人の飲み干してんだよ。」
「ごめんごめん、何か──これは私も大河の幼馴染として、オフィスに来て資料整理とか手伝う人間としてキッチリ聞いておかないとダメだなって思ってさ。」
無理に笑顔を見せるけど、どうやら勘の良い幼馴染は納得してなさそうだ。
まあまあ、珈琲くらい僕が淹れるよ。と少しだけ優しい表情になった久本さんの言葉に救われた…かな。
今、ジッと目を見つめられると大河に頭が痛いのが直ぐバレてしまいそうで怖かったし。
「で、話しを戻して良いか?大河君。」
「あ、すみません。いいっすよ」
「まあ、遺族は遺族なりに何かを考えたんだろうね。その情報をツイッターで公開した訳だ。そしたら何と仰天、同じ様に子どもを行方不明で無くして、給食袋に花びらの様な紙くずが五枚入っていた家族が8人も発見された。それも全部、東京都内の人間でね。」
「……連続誘拐事件、か。」
「──まあ、そう考えるのが妥当だろうと思ってる。だけど警察内部でも連続誘拐だとする見立てを発表するのが良いか否かで意見が割れてるんだ。」
「そりゃそうっすよね。」
「ああ、しかも……そこから警察が独自に似た年頃の子を誘拐されたと思われる家族にコンタクトを取って給食袋内部を調べてもらった所、同じ様な事件が計35件確認された。」
「35件?!?!」
思わず大きな声が出てしまう。
久本さんのせいでもないのに──、だけど目の前で肩を落とす彼は自分を責めている様にも見えた。
「ああ、恥ずかしい話し時系列で言うとこの事件は……東京だけで35件、時系列では15年前から発生してる列記とした児童連続誘拐事件、なんだ。」
「15年前から…それってエグいっすね。そりゃあ、警察内部でも発表するか、しないべきかで意見が割れるのも当たり前です。そんなん、した所で警察がまた叩かれるの目に見えてるんですし。」
「ああ。───でも、これ以上犯人を野放しにしたくない、というより野放しにしてはならないって云う気持ちはどんな役職に着いてる者達も変わらない。そこだけは信じてほしい。」
「皆……結婚して子どもも居るんだ。だからこそ、15年もの間、捕まらずに悠々と児童を誘拐し続けている犯人に、正直腸煮えくり返ってるんだよ。」
「──そりゃ、そうっすよね。」
「正直、子ども達が無事なのかどうかも分からない。無事で怪我無く居る確率の方が低いかもしれない。」
「でも犯人が、給食袋の中に花びらの紙くず五枚を必ず入れてからランドセルを返している所を見ると、これはただの連続誘拐とかそういうんじゃなくて「サイコパスによる仕業、ですね。」
「ああ、その通りだ。」
