「でも、言い方悪いですけど児童の行方不明事件が一件発生した位で俺に依頼してこないでしょ、警察も。」
「俺を動かす事で、世間から『また神埼大河に頼るのか』って思われるのも嫌だろうし──最低でも2000万の金が捜査費用として動く事になる。」
「だから、俺はこの話しにはまだ続きがあると思ってます。どうっすか?久本さん。」
私なんかが到底、口を出せる雰囲気ではない。咄嗟にそう思った。
それ位、目の前の男達二人は真剣な表情で話し合っているのだ。いつ見ても……大河のこういう時の表情1つには圧倒させられる。
ただのサイコパスと言われればそれまでかもしれない。怪奇事件愛好家と言われれば、確かにそうだ。
でも──ワクワクしてそうな、だけど目の前の事件に真摯に向き合おうとしてそうな、そんな何とも言えない彼の顔を隣で見る事は嫌いじゃなかった。
「さすが大河君。いやあ──やっぱり日本には大河君が必要だね、話が早くて助かるよ。」
バツの悪そうな顔をしながらも、どこか安心しきった様にコーヒーを飲んだ久本さん。
「……事件の報道を見たとある家族が、どうやら被害者にコンタクトを取ったみたいなんだ。俺達警察も、その情報は知ってたんだけど被害者同士が話し合う事はよくある事だから、最初は深く気にしてなかったんだ。」
「でも事態が急変したのは昨日だった。」
「昨日の夜に、被害者二家族から連絡が有って新事実が発見したんだ。」
「──…、もう1人の行方不明車の給食袋にも花びらの様な紙が有った、とか?」
「……ビンゴ。2年前に居なくなった子はこの子。浅丘ミオちゃんって子でね、母親曰く7歳の時に下校中に居なくなった、と。」
「でもミオちゃんは美術とか折り紙とかそういうのが好きだから、給食袋に紙が入ってた事も最初は気にしていなかったらしい。……だけど一週間前に居なくなった麗子ちゃんの話しを聞いて、その考えは一変。」
「これが犯人からの何かのメッセージかもしれない、そう思ったと。」
どんなに残虐な事件の詳細を聞いても…
犯行現場の写真を見せられても…
気持ち悪くなる事は多々あっても、頭痛がする事は無かった。でも今は違う。
脳の奥深くから何かで抉られている様な痛さが私を襲う。
──でも、こんな真剣モードな二人を目の前にして、そんな事は言える筈もなく、頭痛を紛らわせる為に大河のブラックコーヒーを一気に飲み干した。
