神埼探偵事務所




きっと実際の所は1、2分だったはずの沈黙でさえ今は何十分もの沈黙に感じた。

此処に居る人達全員が必死に頭をフル回転させて、大河の見立てに付いて行こうと……そして、大河の見立てが本当に正しいかどうかを考えているのだろう。


でも誰一人、異論を唱えないこの事実が、警察庁の特別応接室で独特の存在感を発している神埼大河の才能を示していた。


「でも、それならサクラさんが危ない…。」

「そうです、久本さん。」



「待て、大河。サクラは…」

じっと一瞬何かを考えてから、ゆっくりと立ち上がった大河パパ。

ロイヤルファミリーの主である男と、そのロイヤルファミリーを継ぐ男が2人立ち上がり、何とも言えない威圧感を醸し出しながら互いに見つめ合っているこの瞬間だけで、ビール2杯は飲めそうだ。



「サクラは、平沢を逮捕出来る最高の切り札になるかもしれない。」

「……ああ?」



「いや、誰も平沢本人にサクラを会わせろとは言ってないよ。」

「だけど考えてみろ。」


「平沢の息子、平沢達也が何故警察庁で奇声を挙げる必要があった?親父の犯行を自供するためか?違うだろ。きっと……平沢達也は、サクラこそが自分の父親が求め続けている存在だと気付いているんだ。」


「だけど、アイツは自分の父親に自分こそがサクラを見つけたと云う事実を言っていない。だろう?だって、もし平沢健一がサクラの居場所やフルネームを知ったのなら、それこそありとあらゆる手段を使ってサクラ本人を誘拐するはずなんだ。」


「………確かに」



「つまり、平沢達也と平沢健一には何らかの因果関係が有る。平沢達也は敢えてサクラの気を引こうと、警察庁で叫んだのかもしれない。」


「私をおびき寄せるために…?」


「そうだ。でも、平澤健一はそれを知らない。あくまでも、平澤達也本人に何らかの考えが有る、と考えた方が近いだろう。」




「それなら……」


私の考えが読めたのであろう。大河は全力で呆れた顔をする。……けど、ここは腐っても幼馴染だ。

私が大河の性格を知ってるように、一度言い出したら絶対にやり遂げると云う私の性格を、大河もよく知っている。



「それなら、私が囮になる。先に、息子の達也を引っ張りましょう。」