「……はい。私が誘拐されたのは小学一年生の時です。その時住んでいた家の近くの公園は桜が咲き乱れ、とてもキレイでした。そんな桜を見て泣いている男性が居たんです。慰めようと思って、自分の自由帳を見せた後にこう言いました。❝おじさんにだけ教えてあげる。私の下の名前はサクラっていうんだよ❞と。」
「聞き込みから得た平沢の行動を見る限り、平沢健一自身も何らかの精神疾患を抱えているという点はほぼクロでしょう。」
「……で、あるならば。平沢が昔と今を混同している事も何ら不思議ではない。」
「神埼君、君は……」
「つまり君は、平沢健一は青海サクラさんの面影を探している、とそう言いたいのかね?」
「言いたいんじゃなくて、そうなんです。」
日本の警察界トップに依然とした態度でハッキリと言い切った大河は、今回の見立てがほぼ100%正しいと思っているに違いない。
──私も、贔屓等ではなく今回のこの事件、大河の見立てが正しいと本気で思っている。
「平沢はサクラの居場所が分からないからこそ、サクラを探し続けているんです。でも時折出てくる理性的な自分が、サクラを探す事はほぼ不可能だと言う。」
「だから、せめてもの行動で18年前のサクラに似た女の子を探そうと誘拐している。」
「男の子を誘拐しているのは、あの時代サクラの隣に居たのは俺だから。だからこそ、誘拐されている男の子は全員、茶色のランドセルでしょ?あれは色盲なんかじゃない。俺の面影を今の時代の子供達に重ねているだけなんだ。」
「分かりますか?」
「つまり、平沢の中には2人の自分が居る。」
「1人は理性的でサクラはもう、あの時のサクラじゃないからこそ、似た性格を持つ女の子を誘拐する自分。」
「もう1人は18年前の自分。サクラを捕まえたいが為に俺に似た子達を捕まえて、サクラの居場所を吐かせようと……まあ、理性的ではなく過去に囚われている妄想的な自分。」
「あいつは、精神医学の神なんかじゃない。」
「あいつこそが、今回の犯人で有り、俺達を惑わせているサイコパスな精神疾患野郎なんすよ。」
