「今、日本で9歳未満の児童行方不明者数が年々上がってきている事は知ってるよね?」
「はい。確かちょっと古い情報だと三年前は──1300人位居ませんでした?」
「そうなんだよ。まあ、行方不明って言っても種類は色々と有ってね。」
「例えば親権を取れなかった片親が子どもを取り返したパターンもあれば、海や川で溺れて死体が見つからないからそのまま行方不明者欄に…というパターンもある。」
「そんな中で最近、上野警察署のトップが下から気になる情報を聞いたと、警視庁の方まである話が上がってきてね。」
と言いながら、久本さんは自分のバッグの中から10枚ほどの写真を取り出した。写っているのはどれも可愛い顔をした、幼い子ども達。
何となく先が読めるけど──でも、もし本当に私の予想通りなら三年前に大河が米国FBIとタッグを組んで解決したジョンベネ事件の詳細を聞いた時と同じ位の衝撃だ。
──でも、それ以上に何故か身近に感じて良い年をした私までもが怯えてしまうのは何故だろう。
「ニュースにもなってるから、知ってるかもしれないけど──一週間前に上野に住む9歳の女の子が下校中に行方不明になった事件、知らないかな?」
「あー、今でもやってますよね。防犯カメラに不審者も映ってなくて、捜査が行き詰まってるって。」
「そう、それなんだよ。」
「俺の所に何の話しも来ないから、普通にそっちで解決に向かって水面下で動いてるもんだと思ってました。」
「動くも何も、登下校時に少女が使ってた道路には一切監視カメラも無くてね。少し離れた所のカメラにだって何も映ってないし…」
「犯人の目星が何も無いままに、用水路から少女のランドセルだけが発見されたんだよ。動こうにも動けないって状況でね。」
「───。」
「ここからが奇妙…というより、大河君には❝面白い❞と云う表現が合うのかもしれないけど…」
「少女の給食袋の中から、これが発見されたんだ。」
そう言いながら次に目の前の捜査一課長が取り出したのはジップロックだった。中に入ってるのは……紙くず?かな。
「何すか?これ?ただ単に紙を切ってる様に見えますけど。」
「最初は僕たちもそう思ってたんだけど、鑑識に調べさせたらこの5枚の紙くず全てが同じ大きさなんだよ。」
「……へえ、何かの花びらみたいな?」
「そう。そういう感じだね。でも、イニシャルが書かれてる訳でも指紋が付着している訳でもない。だから、念の為の保管って感じなんだけど、大河君には一応見せておこうと。」
「ってなると、その他には何も変わった事が無かったって事なんすか?」
「そう。血痕や体液の付着は見られなかった。母親の情報によると教科書や筆箱も登校時そのままらしい。」
「………へえ。」
