あれから行政やマスコミがバタバタしたのと同じ様に警察組織もバタバタと動き続けていた。
まあ、当たり前っちゃ当たり前だけど。何だって、あの平沢健一が重要参考人に上がっているんだから。
誤認逮捕でした、では済まされないし……任意同行を求めても彼みたいな人は自分の持つ全ての人脈を使い、やれ名誉毀損だ営業妨害だ、と警察相手に暴れるかもしれない。
し、高官に彼の知り合いが居る事は確かだ。だからあくまでも信用できる連中のみで令状を引っ張る為の証拠を集める……となれば、そりゃあ幾らタフでサイコな大河でも疲れが溜まって当たり前。
「ほら、どうせ苺入れるんだろ。」
「お!さすが私の幼馴染、ありがと。」
あまおう、と大きく書かれた既にヘタの取れてある苺をパックの中から一粒取り出してシャンパングラスへ入れると、ジュワッと何とも言えない音が響き、胸が高鳴る。
「ったく、昔に見たプリティ・ウーマンに感化されてまさか何年も苺を入れ続けるなんてな。そんな単純な女、世界中探してもお前位だぜ。」
「なっ、もしジュリアロバーツが私生活でシャンパンに苺入れてたらどうなのよ?」
「いや、それは無いだろ」
ふかふかのソファーは、さすが一泊6万円だなと庶民の私に思わせてくれる。でも支払った当の本人はこんなの慣れっこなのか、何も気にする事なく、ゴクリと一口、モエ・シャンドンを飲んでから天井を見上げた。
「どうしたの?」
「……。」
「何よ、急に黙って。行き詰まったの?」
……まあ、聞くまでも無く捜査もストレスも行き詰まったから今日、都内のこの高級ホテルに私を呼んだのだろうけど。
