「お名前、何とおっしゃいます?」
「ああ、日本のホームズに名前を聞かれるなんて光栄で御座います。東都新聞の朝比奈と申します。」
「朝比奈さん。」
……大河は昔から誰よりもクールだ。
でも自分の大事な人や物、積み上げてきた事柄が壊されそうになったその瞬間、彼の理性とやらは、狂気に変わる。
女の武器が愛嬌だと云うのなら、男の武器は知性だろう。感情を100%露わにするワケではなく、あくまでも自分は冷静だ、と周りに思わせて、当の本人を追い詰める。これが神埼大河と云う男のやり方だった。
「……僕に女が出来たとしても、出来てないにしても貴方方には関係無いでしょう?」
「推理力が鈍ったとか、日本だから力抜いてるとか、ナメるのも大概にしてもらっていいっすかね。」
「……ナメる?いやいや、これは日本国民の意見ですよ。普段あれだけホームズだの何だの言われてる貴方でしたらもうとっく「僕たち探偵や警察のゴールは何だと思います?」
「はい?」
「ですから、僕たち探偵、警察官のゴールです。」
「そりゃあ犯人を捕まえる事でしょう。」
「そうですよね。決して世論に忖度して有る事無い事でっち上げる事では無いんですよ。貴方方は僕たちの掴んでいる情報を全て知りたいのかもしれない、知った上で批判したいのかもしれない。」
「でも僕たちは言いたくないんです。何故か分かります?」
