神埼探偵事務所




警視庁で開かれている定例会見。

私は大河パパと一緒に記者席の真後ろに立っている。大河パパが現場に居る時は絶対にテレビカメラも週刊誌も彼の姿を抜かない。それは、彼の前の立場上、自分が表舞台に立つ事はトラブルを招いてしまうからだ。

内閣からのお達し……といえば話しは早いだろう。


そして、今日……普段なら家か警視庁で大人しくしておくべき私が大河パパと此処に居るのは、この事件を担当している捜査一課長の左隣に、グレーのスーツを着こなした大河が座っているから。


「……サクラ、大丈夫だからな。」

「う、うん。」



大河が会見に同席する事は余り無い。

やっぱり彼は警察の人間では無いし、探偵と云う事実だけで大河を毛嫌いする世論も未だ少数ながら存在しているからだ。


警察が会見した後に、大阪の事務所内で大河がインタビューに答える……という形が一番多かっただろう。

記者の人達も、この後大河の事務所まで行かなくて良いって云う身体的ストレスの軽減にさぞ喜んでいることだろう。


普段なら絶対に見る事のないこの光景は、日本中の連続誘拐事件への関心の高さをも表していた。



大河パパに緊張を見破られた私は、誰にも聞こえない様にふぅっと息を吐いて、ただただ前だけを見つめる。

そして目が合った大好きな幼馴染に、頑張れと云う意味を込めてゆっくりと一度、頷いて見せた。