智香ちゃんは僕に笑いかける。でも、僕の胸はズキズキと痛んだ。

智香ちゃんは、ある日を境に僕の隣から離れなくなった。いつもそばにいて、僕を支えてくれる。でも、本当は僕は……。

「私はてんかん持ちです。発作を起こしてしまったら救急車を呼んでください」

僕の腕に巻かれたリストバンドにはそう書かれている。僕はそのリストバンドを強く握った。

僕はてんかんという病気を持っている。てんかんとは脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的な興奮により発作を繰り返してしまう病気。年齢、性別、人種関係なく発病し、薬を飲まないと発作が起き、突然死してしまう場合もある。その死のリスクは一般健常者の二十四倍にものぼると報告されているんだ。

僕が初めててんかんの発作を起こしたのは、小学五年生の時。友達や智香ちゃんと校庭で遊んでいる時に起こった。

目の前が急に真っ暗になって、地面に倒れてしまった。目を開けていられない。智香ちゃんたちが騒めく声が聞こえるけど、「大丈夫だよ」と一言言うことすらできなかった。