ーーー花音には言わないでほしいの。
言わなかったよ、お姉ちゃん。
私が魔法使いだ、って。
なにも知らない花音には黙ってた方がいいらしい。
なにを知らないのかは、私はしらないけど。
花音のことなんて興味ない。…はずなんだけど。

…ほんと、このリムジンの中つまんない。
窓の外でも見ようかと思ったら、黒く塗りつぶされて見えない。
私と運転手ともう一人だけしかいない。
つまんない。
私のフィガロ使っちゃおうか。
「西園冬花さん。フィガロの使用は学校についてから、ね。」
もう一人が喋った。
ね、に力がこもっていた。
「なんで、わかったの。」
…このナルシ、といおうとしてやめた。
余計なことはしないほうがいい気がした。
「ひ・み・つ♡」
うざ。
「でもナルシストはひどくなぁい?僕は、人から人気があるだけで、自分のことカッコいいなんて思ってないからさっ」
そういって、ナルシは自分の金髪をさらっと撫でた。
……。
なんでこの人、私がナルシだと思ったって知ってるんだろう。
自覚してるのか?
…まさか。
「気づいた?」
ナルシは、ニヤリと笑った。
………。
こいつ、呪文を唱えなくても心の声が読める。
「こいつ、は禁止ね♡」
……。
「ほーら、黙らないでよっ!僕は春から君の担任だからさ!」
「最悪」
「あ、もう口で言っちゃうんだね。」
「だって、どうせ心の中でいってもわかるんでしょ。」


なんだか、花音のほうがいいような気がしてきた。
でも、行かなきゃいけない。
お姉ちゃんに会いに。