お風呂からあがり、すっかり温まった体を浴衣に包んだ私は清貴さんの元へ戻る。
「お待たせしました」
「あぁ」
ソファに座って待っていた清貴さんも、先ほどのスーツから浴衣に着替えている。
「着替えたんですね」
「あのまま座るわけにはいかないからな。風呂はどうだった?」
「とってもいいお湯でした。景色もすごく綺麗で最高ですね!」
元気よく答える私に、清貴さんは小さく笑うと、自分の足の間をポンポンと叩いて示す。
その仕草は『ここに座って』と言っているようだった。
それを察して、おずおずとその足の間に座った私に清貴さんは私の髪をそっとタオルで拭ってくれた。
タオル越しに頭を撫でるように、髪を拭う優しい手。
心までほぐされて、私は小さく口を開いた。
「……さっきの人、私が勤めていた学校で同じく教師として勤務していた先輩なんです」
「村瀬、と言っていたか」
「はい。村瀬先生は私の3つ年上で、面倒見がよくてなにかと気にかけてくれた、いい先輩でした」
当時私は夢だった英語教師になり、毎日があっという間に感じるほど大変だった。
だけど生徒たちと接するのは楽しかったし、先輩も上司もいい人で、環境にはとても恵まれていると感じていた。



