よくわからないまま夜は更け、翌朝も清貴さんはテーブルの上のお守りには一切触れず仕事へ出た。
清貴さん、お守りとか神様とか信じないタイプなのかな。
放置したままにしておくのも申し訳なく、私は清貴さんの分のお守りを棚上にそっとよけておいた。
その時、ピンポンとインターホンが鳴る。
誰だろう、とインターホンのモニターをつけるとそこには増田さんが映し出された。
すぐさま玄関へと出ると、そこにいた増田さんは小さめのダンボールいっぱいにキャベツやネギなどの野菜を抱えている。
「増田さん、どうしたんですか?」
「奥様、おはようございます。実は近所から沢山野菜いただいちゃって……使い切れないですし貰ってくださいな」
そう言って増田さんが差し出すダンボールを受け取ると、手にはズシッと重みが伝う。
「ありがとうございます。いいんですか?こんなに」
「もし多くて消費しきれなかったらどこかに分けてください」
増田さんはそれだけ言うと、「これから仕事なので!」と足早に去って行った。
仕事前にわざわざ持ってきてくれたんだ。増田さんいい人だなぁ。
でもたしかに、私と清貴さんのふたりではこの量は食べきれないかも。
改めてダンボールの中を見ると、どれも新鮮な野菜たち。ダメにしてしまってはもったいない。
でも分けるといってもどこに……。
考えてからふと思いついたのは、昨日会ったばかりの周さんの存在だ。
そうだ、周さんのところに持っていこう。
初めてできたご近所さんだ、こういう交流もいいよね。
あ……でも昨夜清貴さんが『危ないからあいつのところにはひとりで行かないように』と言っていたっけ。
でも夜にわざわざ清貴さんを連れて持っていくのも変だよね。
……ちょっとくらいならいっか。
大丈夫、周さん悪い人には見えないし。
よし、と私は貰った野菜から家で使う分だけを除き、さっそく宝井神社へと向かった。



