「さっそく食べてもいいですか?」
「いいけど、それ食べて夕飯食べられるのか?」
「甘いものは別腹です!」
言い切ると、私はさっそくケーキをお皿にうつしひと口食べた。
「ん~!おいしい!」
ふわふわのスポンジに甘すぎないクリーム、さっぱりとした苺……確かに美味しくて思わず顔がほころんだ。
清貴さんはスーツのネクタイをほどきながらこちらを見る。
「うまそうに食べるな」
「だって本当に美味しいですもん、最高です!あっ、清貴さんもひと口食べますか?」
せっかくならこの美味しさを分け合いたい、と私はケーキをひと口分のせたフォークを彼に差し出す。
って、はっ!これじゃあ間接キスになっちゃう。
せめて新しいフォークを用意して……と一度フォークを引っ込めようとした。
けれど清貴さんは顔をずいっと寄せて、ケーキを口に含んだ。
「ん、甘いな」
呟きながら、ペロッと唇を小さく舐める。
その仕草がなんとも色っぽく、思わずこちらが赤面した。
「それにしてもそこまで喜ぶなら買ってきて正解だったな。毎日買ってくるか」
「え!?それは困ります、太っちゃう!」
「俺は気にしないけどな」
「私が気にするんです!」
必死に止める私に、清貴さんはおかしそうに笑った。
こうして見ると、最初の頃よりずいぶん表情が柔らかくなった気がする。
少しずつ心を開いてくれている証拠かな。そう思うと嬉しくなる。
つられて笑って、ふと今日のことを思い出した。



