「縁結びとは言うけど、縁は結ばれているものを見つけるより、自ら結んでいくほうがよっぽど運命的で素敵だよ。
このお守りは、あくまでその背中を押すためのもの」
そう囁いて、そのお守りを私の手に握らせた。
「もらって。一個は春生ちゃんに、もう一個は名護に、僕からの結婚祝いってことで」
「えっ……いいんですか?」
「もちろん。名護は難しいやつだと思うけど、どうぞよろしくね」
周さんは、穏やかな声でそう言うと「またいつでもおいで」とその場を去って行った。
私の手の中には、縁結びのお守りがふたつ残される。
穏やかで、不思議な雰囲気の人。
笑顔は優しいけれど、心は読めないというか、なんというか。
その日の夜。
帰宅した清貴さんをいつものように玄関で出迎えると、その手には白い箱が持たれていた。
「それ、なんですか?」
「おみやげだ。……本社の社員が『美味しくて有名な店だから奥さんに買っていったら喜びますよ』と言うから、買ってきた」
そう言いながら、清貴さんは私に箱を手渡す。
リビングに戻ってから箱の中を見てみると、そこには真っ白なショートケーキと、艶やかなチーズケーキが入っていた。
見た目からしてとってもおいしそう。
それに社員さんからおすすめされたとはいえ、わざわざ買ってきてくれたんだ。嬉しいなぁ。



