名護さんに初めて本音をぶつけたあの日から一週間。

あれからこの家に増田さんや他の仲居さんたちが家事をしにくることはなく、家のことは全て自分でするようになった。



毎日料理はもちろん、掃除もするし洗濯もする。

食事も一緒にとることが増え、朝は毎日、夜も早く帰って来た日はふたりで食べている。



チラッと見ると、目の前の名護さんは綺麗な箸づかいで黙々とおかずを口に運ぶ。

おいしいと言ったり褒めたりもしない、けれど毎日残さず食べてくれる。それがなによりの感想に思えて嬉しくなる。



それにしても、今日も朝から完璧に決まってるなぁ。

寝癖ひとつないセットされた髪に、綺麗な形の二重の目、きっちりと締められたネクタイ。

昨夜も帰りが遅かったにもかかわらず、眠気や疲れを微塵も見せない名護さんはさすがだ。



名護さんはあっという間に食事を終えると、鞄を手にリビングを出る。

私もそれについていくように、玄関まで見送った。



「忘れ物ないですか?ハンカチや時計、スマホ持ちましたか?」

「持った。子供扱いするな」

「男はいくつになっても子供だって冬子さんが言ってました!」



冬子さんがよくおじさんやお兄ちゃんに言っていたことを思い出して言う。

すると名護さんはなにか言いたげに私の顔をじっと見た。