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季節は5月。

爽やかな晴れ空が広がる、連休明けの月曜日。



走る車の窓から外を見ると、勾配のついた道を青く茂る木々がトンネルのように覆う。

平日にもかかわらず多くの観光客でにぎわう箱根湯本の駅を横目に山を越えると、雄大な芦ノ湖のほとりにそれはあった。



【NAGO GROUP RESORT hakone】と書かれた門を車でくぐる。

敷地面積は6000坪はあるだろうか。広大な敷地にどんと構えた3階建ての和風旅館。

3棟に分かれた白色の外壁を見つめるうちに、車は駐車場の端に停められた。



「はい、到着」



運転席からかけられた声を合図に、後部座席に乗っていた私はドアを開けた。

鮮やかな赤色の生地に花と手毬が描かれた、華やかな振袖に身を包み、不慣れな草履で地面を踏む。



「うーん、疲れたー」



地元から3時間近くの道のりを、着物姿のまま車に揺られていたこともあり、私は凝った体を思い切り伸ばす。

そして改めて、目の前にそびえる旅館に目を止めた。