「それ……」
「婚約指輪を渡してなかったからな。ちょうど今日できたところだ」
清貴さんはそれを手に取り、私の左手薬指にそっとはめた。
サイズぴったりのその指輪は、夕陽に照らされオレンジ色に輝く。
「ずっと一緒にいたい。だから、俺の妻になってくれ」
永遠を誓う言葉が、ふたりの心を強く結ぶ。
「私も……清貴さんが好きです。大好きです」
涙で濡らした顔で笑った私に、彼もそっと微笑むともう一度キスを交わした。
「あ、イチャついてるカップルはっけーん」
「わっ!?」
そのタイミングで聞こえた声に驚き振り向くと、そこにはいつの間にいたのか周さんが展望台の下からこちらを見ていた。
笑いながらひやかすように言う周さんに、清貴さんはジロリと睨む。
「周……お前なぁ……!」
「まぁまぁ、おかげで春生ちゃんとも仲直りできたんだしいいじゃない!ね!」
けらけらと笑って言われ、清貴さんは納得できるようなできないような、複雑な顔を見せた。
「さて、名護も来たことだし帰ろうか。春生ちゃん、送って行ってあげようか?」
「いい!俺が送る!」
「えー、ざんねーん」
清貴さんに追い払われるように、周さんは一足先にその場を去る。
そして再びふたりきりとなると、清貴さんは私にそっと手を差し出した。
「帰ろう、春生」
「はいっ……」
私はその手をとり、清貴さんとともに歩き出した。
長い年月を経て結ばれた縁は、今この瞬間ふたりをつないでくれている。
きっといつか、緩みほどけかけてしまうこともあるかもしれない。
だけどそのたび、伝え合って抱きしめて、また強く固く結んでいくんだ。
何度だって、繰り返し。
end.



