「あら?春生じゃない。この前も来たばっかりなのにどうしたの?」
「僕が春生さんの地元を見たくて、無理言ってついてきてもらったんです。あ、初めまして。春生さんのご近所の宝井周と申します」
周さんはにっこりと笑って挨拶をし、冬子さんの手をきゅっと握る。
爽やかな好青年の自然なスキンシップに冬子さんは「あらー」と嬉しそうに頬を染めた。
「春生ちゃん、あのストラップのことおうちの人にも聞いてみたら?」
「あ、はい。冬子さん、これなんだけど」
周さんに促され、私はあのまま持ってきた清貴さんのストラップを冬子さんに見せる。
すると冬子さんは少し驚いた顔をした。
「ずいぶん懐かしいもの持ってるじゃない。どこにあったの?」
「え……?」
「それ、子供の頃に春生が大切にしてたやつでしょ。いつのまにか見なくなってたからなくしちゃったんだと思ってたけど、あったのね」
冬子さんの言葉に耳を疑う。
これ、私のものだったの……?
「たしかにどこか見覚えはあったんだけど……でも、全然記憶になくて」
「小さい時の話だからね。それにあれは春生がお母さんからもらったものだったから、無意識のうちに忘れようとしたのかもね」
そうだったんだ。
でも、清貴さんが持っていたこのストラップが私のものだったということは、もしかして……。
「ねぇ、冬子さん。私と清貴さんって、子供の頃に会ったことある……?」
胸に浮かんだひとつの可能性を口に出す私に、冬子さんは「えっ」と声を発した。



