「春生、どうした……?」



いつもあまり感情が表情に出ない彼が、こんなにも驚きを見せるなんてめずらしい。

緊張感の中、そんなことを頭では冷静に考えながら、私は清貴さんの前に立つ。

そして右手で、その肩をぐっと押した。



油断しきっていたのだろう彼の体はいとも簡単に倒れ、私はその上に組み敷くようにまたがる。



「……抱いて、ください」



ぼそ、とつぶやいた声に、その目はいっそう大きく驚く。



緊張する。

声が、震える。

だけど今は、彼からの証がほしい。

多少強引でも、つながれるものがほしい。



「春生……?」

「私、清貴さんの妻ですよね。だから……あなたとのつながりがほしいんです」



真っ直ぐ目を見て言った私に、清貴さんは一瞬戸惑いながらも私の腕を引く。

そして私の体を抱き寄せ、そのまま横に転がると私の上にまたがり先ほどとは逆の体勢になった。



「そんなふうに煽って……後悔するなよ」

「しません……だから、抱いて」



茶色い瞳でじっと見つめながら、清貴さんは私の頬から首筋にかけてをそっと撫でる。

指先の感触がくすぐったくて、思わず「んっ」と甘い声が漏れた。

その手が、私の体を覆うバスタオルにかけられる。



どうしよう、緊張する。

こんな形でいいのかな。

本当に、私がほしかった証は手に入るのかな。



覚悟を決めたはずなのに、ここまできて揺らぐ自分の心が憎い。

大丈夫、怖くない、これで安心できるはずっ……。

思わずぎゅっと目をつむった、次の瞬間。



「……ダメだろ」



タオルを脱がされることはなく、代わりに降ってきた言葉に目を開けると、目の前には切なげに歪む清貴さんの顔がある。