「あ!そうだ、お土産買ったんだった!」



そう。地元に行った時の帰り道、『旅館のみんなにお土産を買っていく』と言う清貴さんに、せっかくなので周さんのおうちにもと買ってきたのだった。

清貴さんは嫌そうな顔をしていたけれど……。

なのに、浮かれるあまり持っていくのをすっかり忘れていたなんて。



「よかった、賞味期限まだ大丈夫だ……すぐ持っていっちゃおう」



紙袋を手に、急ぎ足で家を出ると宝井神社へと向かった。



やって来た宝井神社は、今日も多くの参拝客でにぎわっている。

周さんいるかな。そう辺りを見回すと、社務所の前を竹ぼうきで掃く周さんの姿を見つけた。



「周さん」

「春生ちゃん。こんにちは」



今日も穏やかな笑顔で迎える彼に私は小走りで近付いた。



「これ、先日私の地元に行ってきたときのお土産です」

「わざわざありがとう。いやー、『あいつにはいらないだろ』って嫌そうな顔をしながらも春生ちゃんのために渋々買ってくれる名護の顔が目に浮かぶ」



周さん……すごい、たしかにその通りだった。

清貴さんの反応などお見通しなのだろう。それをあえて楽しむように周さんは笑って、私が差し出した紙袋を受け取った。



「あれ、春生ちゃんなんかいいことあった?ごきげんだね」

「えっ、そうですか?」

「そうそう。さては名護といいことでもあったね?」



自分では顔に出しているつもりはなかったけれど……やはり顔に出てしまっていたのだろうか。

しかも清貴さんとのこと、という点まで当てられて、恥ずかしさから頬を赤らめる。



でも夫婦間のことを下手に話すと、清貴さんは嫌がりそうだし、周さんは喜んでしまいそうだし……。

ほかになにか話題を、と視線を逸らすと、社務所で売っているお守りのなかのガラス玉のキーホルダーが目に入る。



「あれ、これってこの前ありましたっけ」

「あぁ、この前は売り切れで、最近また再入荷したんだ」



赤い組紐でくくられたガラス玉に『宝井神社』の名が入ったキーホルダー。

その形から思い出すのは、清貴さんが持っていたピンクのストラップだ。