清貴さんとともにやってきたのは、昨日村瀬先生と遭遇した場所近くにある喫茶店。

平日午前という人の少ない店内、窓際の席で村瀬先生は待っていた。



「杉田先生……」



私を見た途端席を立つ彼に、思わず一歩後ずさる。

清貴さんはそんな私の肩を抱いて落ち着かせると、村瀬先生と向き合う形で席についた。



「朝早くからお呼び立てしてすみません」

「いえ、今日にでも話をしたいと言ったのは僕ですし……昨日今日と、有給もとっていたので」



あまり寝ていないのだろう、疲れた顔をする村瀬先生に、私は冷静さを保ち口を開く。



「……昨日は取り乱してすみませんでした。今日は、全部終わらせるために話にきました」



終わらせる、とはっきり言い切るのを耳にして、村瀬先生はしゅんとした顔をする。

とりあえずまずコーヒーを二杯注文し、それらが運ばれてきてから村瀬先生が口をひらいた。



「僕、ずっと謝りたかったんです。あの時は僕のせいで杉田先生がひとり悪者になってしまって……守れなくて、本当にごめんなさい」



今更、としかいいようのない言葉を並べる彼に、返す言葉を選んでしまう。

ところが彼は突然腕を伸ばし、テーブル越しに私の手を掴んだ。



「けど、僕はあなたを好きだっただけなんだ!周囲の評価の手前本当のことはいえなかったけど……心の中では、僕はずっとあなたの味方だったんだよ!!」

「なに、言って……」

「その気持ちは今でもずっと変わらない!僕はまだあなたのことが好きだ!愛してるんだ!!」



テーブルから身を乗り出して、興奮気味に声を大きくする彼に、店内にいる人は何事かとこちらを見た。

そんな状況で彼を見ていると、恐怖心よりも徐々に冷静になっていく自分がいた。