冬子さんたちに引き取られてからずっと、幸せだった反面どこか心の奥で負い目を感じていた。



いいのかな、こんなにしあわせで。私は本当の子じゃないのに、って。

だからこそ、立派な社会人になって安心させたかった。

この子を引き取ってよかったって思ってもらえるような存在になりたかった。



それができなくなってしまった私が選ぶ道は、『結婚』しかなかったから。



「私は、清貴さんとの結婚を逃げ道にしてたんです。それは冬子さんたちのためじゃない、自分の罪悪感から逃れるために選んだ道なんです……」



どんなに前向きな言葉を発しても。綺麗事を並べても。

結局は全て自分のためでしかなかった。

最低な、自分。



この言葉を口にして、嫌われても引かれても当然だって思う。

……だけど。



「なのに……今、あなたに嫌われることが怖い」



清貴さんには、知られたくなかった。

離婚されたら杉田屋が、とかそういう気持ちよりも、彼との日々をなくしたくなくて。



本当の気持ちを言葉にすると同時に、涙がポロポロとこぼれ出す。

すると清貴さんは座ったまま私の体をそっと持ち上げ、お姫様抱っこの形で抱き寄せた。



「どうしてそんなに、自分のことばかり責めるんだ」

「え……」

「幼いうちに親を亡くしたきみが、大人に頼り育ててもらうのはおかしいことじゃない。負い目を感じることなんてないだろ」



それは、私を肯定する言葉。