「誰も俺が脱獄したことに気付いてないみたいだね」

「逃げ出せないと思っているのさ。私はユミルに完全に従っていると思い込ませているし、ロネは杖を奪われていたからな」

見つかってしまわないかドキドキしたものの、ロネとアテナは無事に最上階へ到着した。最上階はどこの階よりも一段と豪華だ。

「ここであの人は過ごしている。だからこんなにも豪華なんだ」

「まるで本物の女王様がいるみたいだね」

最上階には、美しいステンドグラスでできた巨大な窓がある。そこから二人は最上階の屋根に立った。

「久しぶりの外の風だ〜!!」

胸いっぱいに風を吸い込み、ロネは笑う。アテナも同じように深呼吸をした。

「不思議だ。お前といると心がこんな時にも落ち着いてくる。どんなに辛いことでも、お前のことを考えると耐えることができたんだ」

「アテナ……」

ロネはそっとアテナの頬に触れる。そして、そのまま唇を重ねようとした。しかし、冷たい声が響く。

「やっぱりあたしを騙してたんだね、アテナ」