家庭科室の冷蔵庫に買ったものをきちんと整頓して入れて後は帰るだけ。
そう思ってバッグを持って家庭科室から出ようとした、その時だった。
「伽耶、待って」
私は右腕を捕まれた。
驚いて振り返ると笛吹くんは顔だけでなく耳まで真っ赤になっていた。
私は何度も瞬きをしてしまった。
夢か現実か区別がつかなかった。
お互い黙りこみ、私は腕を払うのも忘れていた。
フリーズすること数十秒、ようやく彼が口を開いた。
「あのさ...その......俺...俺、伽耶のことが好きだ!わ、わわっ、分かってたと思うけど...その...本当に、ほんとにほんとに本当に好きなんだ」
「ごめん、無理」
「へっ?」
私は即答した。
無理に決まっている。
だって私には...悠永という好きで好きで仕方がない人がいるから。
「私、好きな人がいるの。だからごめん。笛吹くんとは付き合えない」
人生で初めて告白されたというのに、なぜこんな場所でこんなシチュエーションなのか残念でならなかったのだけれど、好きだと言われて少し...いやけっこう嬉しかった。
でもはっきりとお断りするしかなく、私はきちんと頭を下げた。
誠心誠意謝れば引き下がってくれるだろう。
そう思っていたのだけれど、笛吹くんは屈するどころか逆に嬉しそうにうんうんと頷くと、私の腕を離してびしっと背筋を伸ばした。
「ライバル上等だよ。俺、絶対そいつに勝つ!伽耶のこと諦めないから!じゃ、また明日」
最後は敬礼して去っていった。
私の理解の範疇をゆうに越えたとんでもない変人である。
その日のことは日記にも記したのだけれど、書き留めておかなくても脳が色濃く記憶したから書く必要はなかった。
そう思ってバッグを持って家庭科室から出ようとした、その時だった。
「伽耶、待って」
私は右腕を捕まれた。
驚いて振り返ると笛吹くんは顔だけでなく耳まで真っ赤になっていた。
私は何度も瞬きをしてしまった。
夢か現実か区別がつかなかった。
お互い黙りこみ、私は腕を払うのも忘れていた。
フリーズすること数十秒、ようやく彼が口を開いた。
「あのさ...その......俺...俺、伽耶のことが好きだ!わ、わわっ、分かってたと思うけど...その...本当に、ほんとにほんとに本当に好きなんだ」
「ごめん、無理」
「へっ?」
私は即答した。
無理に決まっている。
だって私には...悠永という好きで好きで仕方がない人がいるから。
「私、好きな人がいるの。だからごめん。笛吹くんとは付き合えない」
人生で初めて告白されたというのに、なぜこんな場所でこんなシチュエーションなのか残念でならなかったのだけれど、好きだと言われて少し...いやけっこう嬉しかった。
でもはっきりとお断りするしかなく、私はきちんと頭を下げた。
誠心誠意謝れば引き下がってくれるだろう。
そう思っていたのだけれど、笛吹くんは屈するどころか逆に嬉しそうにうんうんと頷くと、私の腕を離してびしっと背筋を伸ばした。
「ライバル上等だよ。俺、絶対そいつに勝つ!伽耶のこと諦めないから!じゃ、また明日」
最後は敬礼して去っていった。
私の理解の範疇をゆうに越えたとんでもない変人である。
その日のことは日記にも記したのだけれど、書き留めておかなくても脳が色濃く記憶したから書く必要はなかった。



