二度目の初恋

それは去年の夏休みのこと。

吹奏楽コンクールの関東大会で銀賞になり、次に進めなかった私達は夏休み明けに行われる定期演奏会の練習をしていた。

午前10時から午後5時までびっちり練習し、翌日から2泊3日の校内合宿に向けて色々買い出しをしてから帰ることになっていた。

木管楽器と金管楽器、打楽器で役割分担され、木管の人たちは全員から徴収した合宿費の合計金額を確認してその半分を食費に当てて良いことになっていた。

ということで、計算が得意なクラリネットの銀縁メガネ女子に計算してもらい、手分けして買い出しに行った。

それでまた笛吹くんと同じになったのだ。


「ねえ、なんでサックスの笛吹くんと私が一緒なの?私と原田さんで良かったじゃん」

「まあまあ気にすんなって。やっぱり皆俺らのことお似合いだなって思ってるんだよ」

「は?」


まともに話を聞いていては疲れるだけだから私は早歩きで学校から一番近いスーパーに向かった。


「おいおい、待ってくれよ~」


笛吹くんの話は無視してどんどん買い物かごにぶちこんだ。

彼はカートを押してもらうだけで十分だ。

私はここ数年料理を毎週末やって来たからカレーや野菜炒めなどと言われれば簡単に必要な材料が思い付く。

それをいつもの15倍量で計算して必要量を出し、後は材料の重さを考慮して分担し、指定されたものを買えばそれで良しなのだ。


「いやあ、伽耶はすごいよ。出された予算内で材料をどうするか考えて割り振れるなんてさ。いいお嫁さんになれそうだな」

「いいからちゃんと押して下さい」

「うっわ、冷てぇ。ちょっとは嬉しそうにしろよ。こっちは誉めてるんだから」


というように必死に話しかける笛吹くんをスルーしていったお陰で、短時間で必要なものを滞りなく買うことが出来た。