二度目の初恋

お風呂からあがり、部屋に戻って来ると11時を回っていた。

学校と塾から出された課題をやらなければならないためまだ寝られない。

テキストとノートを出し、課題を進めようとしているところでスマホが鳴った。

こんな時間に誰だろうと見てみると、同じ高校に通うちょっと厄介な人からのメッセージだった。


"月が綺麗ですね"


たったそれだけだ。

かの有名な夏目漱石が英語教師時代にI love youをどう訳すかと生徒に聞かれた時にそう答えたらしく、結構有名な話だ。

私を小バカにしているんだろう。

そんな人は放っておけばいい。

明日練習で会ったら忠告しておかねば。

それより気になるのは悠永だ。

明後日練習終了後に立葵駅前で待ち合わせし、勉強を教えることになっているけど、今日は七夕だから何かメッセージがあっても良いはず。

しかし、何度も確認したが、届いてはいなかった。

肩を落としたものの、悠永はまだバイト中の可能性もある。

暇じゃないんだから、我慢しないと。

2人で会えるだけでも幸せなことなんだからこういう時は我慢だ。

スマホの電源を切り、髪をしばって私はテキストとにらめっこを始めた。

夜はまだ明けない。