二度目の初恋

ゆいぼんが帰ってきてからも悶々とした日々は続いていたけど、アタシはひとつの望みを託して毎日あることをしていた。

それは...悠永に電話とメールをすることだ。

悠永とゆいぼんが再会すれば状況は大きく動くのではないかと思っていたんだ。

だって2人は......

両想いだったから。

泰翔もももかもアタシも皆分かっていた。

ゆいぼんは鈍感で自分の気持ちに気づいていないみたいだったけど、悠永は確実にゆいぼんが好きだった。

元々ポーカーフェイスタイプの悠永は感情を持たない生命体のようで、出会った時からアタシは悠永を不思議に思っていた。

そんな悠永が笑うのはいつもゆいぼんが隣にいて笑っている時だった。

アタシのダジャレにも幼なじみのももかが側にいても滅多に笑わないのに、ゆいぼんの前だと歯を見せて笑うんだ。

そして、些細なことで良く喧嘩していた。

悠永はぶっきらぼうでブスッとしていることが多く、先生に挨拶をしないで帰ろうとすると、ゆいぼんに腕を捕まれて停止させられ、それに逆上して怒ることもしばしば。

給食で同じグループになると喧嘩はたえなかった。

お互いの好き嫌いを押し付けあって喧嘩して、あまりにもうるさくてお昼の放送が聞こえないからと先生が止めに入ったこともあった。

という取り留めのない喧嘩もいつの間にか終わっていた。

休み時間のチャイムが鳴ればコロッと忘れるのか、次の授業が理科の実験だったりすると仲良く顕微鏡で微生物を眺めていたりしたんだ。

喧嘩するほど仲が良い。

アタシもゆいぼんに言われたけど、昔のゆいぼんと悠永には敵わない。

なんて言っておきながら2人が両想いという確証は無いんだけれど。

ゆいぼんは鈍感、悠永はシャイだったから告白したなんて聞かなかったから。

それでもアタシは悠永とゆいぼんの愛と絆を信じて毎日の業務をこなした。

ゆいぼんが悠永を好きだったと思い出してまた2人が笑って、それを見て泰翔がゆいぼんを諦めてくれればそれで全て丸く収まるんだ。

その先に泰翔とアタシの未来があればそれが一番だけど...そうじゃなくてもいい。

とにかくこれ以上泰翔もアタシも傷付かなければそれでいいんだ。

いや、それがいいんだ。

だからお願い。

お願いだから、悠永、ゆいぼんに会ってよ。

そして、泰翔とアタシを救って。

そうすれば悠永もあの日の罪悪感が少しは和らぐと思うから。