二度目の初恋

中から出てきたのは、母だった。

あの後も父に叱られながら飲んでいたのか、酒の匂いが鼻を刺激した。


「由依!どこに行ってたの?!」


母の声に反応して父もリビングから出てきた。


「由依!それに...君は確か...」


悠永くんの肩がぶるぶる震えている。

寒さからか緊張からか分からないけど、それでも勇気を出して前に足を踏み出した悠永くんの横顔に、胸がキュンとなってしまった。

わたしはどうにか悠永くんにこの想いも気持ちも伝えたくて、さっきよりもぎゅうっと握った。


「藍純悠永です。あの日は本当に......」


悠永くんが謝ろうとした、その時だった。


――パチンッ!


わたしは驚きで目を丸くし、口をあんぐりと開けてしまった。

お母さん...なんてことを......。

悠永くんは何も悪くないのに......なんで?

どうして?

わたしは言葉を探したけど、何と言っていいのか分からず、口をつぐんだ。

母は紀依に向けていたのと同じ鬼の形相で悠永くんを睨み続けていた。


「あなたどの面下げてここに来たの?!」

「オレはただ由依さんを見つけて送ってきただけで...」

「2度と来ないでっていったじゃない!!」


悠永くんに飛びかかろうとする母を父が必死に腕を掴んで押さえた。

今度こそ何か言わなきゃ。

わたしは勢い良く言葉を口にした。


「お母さん、あのね、悠永くんはすっごく優しくてすっごく良い人なの。だから...」

「そんなこと、あの日のことを覚えていない由依には分からないわ!だってこの人があなたを道路に誘導したのよ!」


えっ......

どういうこと......。

右手の力が抜けた。


「依子、よせ!由依に変なことを言うな。あれは事故だったんだ!誰のせいでもない」

「うるさいっ!あなたは穏やか過ぎるのよ!娘を事故に遭わせた張本人を前にして怒らない親なんていないわ!優しかろうが、良い人だろうが、由依の友達だろうが関係ないっ!金輪際由依や私達の前に現れないで!行くわよ、由依」


娘を事故に遭わせた張本人......?

一体どういうこと?

悠永くんがそんなことするわけない。

するわけないよ。

するわけない。

するわけない...よね?

わたしがぼけっとしている間に母に引っ張られ、中に引きずり込まれた。