二度目の初恋

「あのさ、兄ちゃん。ちょっといい?」


冬場でも自主トレをしている悠真はオレが出掛けるのとほぼ同時に起きているが、その日は少し早起きしたようだった。

オレの部屋の戸を開け、中に入ってきた弟はオレよりも凛々しく男らしい体つきをしていた。

いつの間にか声も低くなっていて、それさえも気づかなかった自分を省みることになった。

オレはオレの人生を生きるのに必死で、回りを見られていなかったのかもしれない。

そんなことを思いながらリュックに荷物を詰め込んでいると、悠真は口を開いた。


「兄ちゃん最近様子変だよ。何があったんだよ?」


オレは答えず、リュックをあさる。

どれだけあさっても、どれだけキレイにしてもそこからは何も出てこないのにオレは何度も何度も中身を確認した。


「なぁ、きいてんのかよ...!」


悠真がオレの左腕を掴んだ。

握力は確実にオレよりあるだろう。

オレが目を外している内に弟の方が何倍も何十倍も強く、たくましく、そして...正しくなっていた。


「兄ちゃんがそうなったのってさ......あの人が原因なんだろ?」

「あの人...?」

「この前見たんだよ。兄ちゃんと同じ制服の長い黒髪の女子高生を。先週の水曜日、2月14日のバレンタイン。その人ずっと駅のホームに座って誰かを待ってた。それが...兄ちゃんなんだろ?」


オレは意味が分からなかった。

どうして悠真が由依を知っているのか。

どうして由依がそこにいたのか。

どうして...どうして、なんだ?

オレは頭を抱えて、整理しようとしたが出来なかった。

何とかしようと思うほどオレはオレの脳も胸も心の奥底までもぎゅうっと何かを握りつぶすような痛みが強くなった。