二度目の初恋

その晩。

相変わらず紀依ちゃんはわたしや母に素っ気なく、勉強だと言って夕食も半分以上残して部屋にこもってしまった。

わたしは紀依ちゃんの分をラップして冷蔵庫に入れた。


「由依は反抗期が無かったのに紀依はすごいわね」

「健全な証拠だよ。紀依は紀依なりに毎日成長しているんだ」


帰ってきたばかりの父はネクタイを緩めて席に着く。


「何よ、あなた。まるで由依が異常みたいな言い方して」

「別にそんなこといってないじゃないか。現に反抗期がない子もいるってこの前テレビでもやってたぞ」

「でも今のは完全に差別よ。由依に謝って」

「えっ?わたし別に気にしてないよ」


わたしがそう言っても母は不満そうな顔で父をぎろりと睨み付ける。

父はお腹が空いているようだが、目の前にあるオムライスにスプーンを入れられずにいた。


「早く謝って」

「いや、良いって。わたしは大丈夫だから」


父は立ち上がり、わたしの側に立った。


「ごめんな、由依」

「わたしは全然大丈夫だよ。気にしないで、パパ」


父がわたしの許しを得たところで母はお風呂に向かっていった。

なんだろう、この噛み合わない感じは。

この不協和音も全部わたしのせいなんだよね...。

冷蔵庫の前で俯いて突っ立っていると、父がオムライスを食べる手を止めて話し出した。