二度目の初恋

「うわっ!」

「ごごっ、ごめん。ちょっと聞き忘れてたことがあって」

「えっ?」


反対方向に歩いて行ったはずのゆいぼんがオレの瞳を占拠していた。

真ん丸の大きな瞳に見つめられるとオレはやはり息が出来なくなる。

全てを見抜かれているようなそんな気になるけど、それはたぶん違う。

ゆいぼんはオレのことを半分も知らないし、半分も理解出来ていない。

だから聞いてくる。

しつこいくらいに何度も何度も問いかける。

どっちがいいの。

どれがいいの。

何なら食べられるの。

何が嫌いなの。

何が好きなの。

何が一番嫌なの。

何が一番好きなの。

それなのに、聞かないことがある。

ゆいぼんが一度も聞かなかったことは......


「ぱるとは...ショートヘアは好き?」

「はぁ?」


これもまた違う。


「一応聞いておきたくて。一応だよ、一応。髪切るって言ってもどこまで切れば言いかなって思って。で、どう?」

「どうって聞かれても分からない。オレ、想像力乏しいから短くなったゆいぼんを想像出来ない」

「そっかぁ。分かった。なら、大丈夫。ありがと、ぱると」


ゆいぼんが左手を振る。


「待ってゆいぼん!」


オレは叫んだが、ゆいぼんは振り返ることなく走り去ってしまった。

オレは足元に転がっていた石ころを蹴った。

ショートとかどうとか関係ない。

ゆいぼんに聞かれても聞かれなくても関係ない。

どんなゆいぼんだって、

オレは...

オレは...。