二度目の初恋

オレとゆいぼんの家は逆方向。

だから一緒に帰ると行ってもあの公園までだった。

ゆいぼんはオレが気を遣わないように無理に笑って元気を装っていた。

ゆいぼんの笑顔をオレが奪っている。

その事実が胸を締め付けて痛い。

謝らないと。

伝えないと。

うざいとか、嫌いとかこれっぽっちも思っていないって。

むしろオレは...

オレは...ゆいぼんが...。


「そういえば、明日わたし髪切りに行くんだぁ。カナちゃんも髪切ったって言ってたし、そろそろ温かくなってきたから切ろうと思って」

「そう...」

「なんて言ってもぱるとはわたしの髪型になんて興味ないと思うけど一応報告しておく。だから明日わたし遅れるね。たぶん11時半くらいになっちゃうと思う。たかれなもおばあちゃん家に行ってから来るみたいだから12時過ぎるって。ってことをひろくんにも伝えてね」

「うん、分かった」


明日は3月3日ひな祭り。

そんなの気にすることなく、塾で来られない伽耶以外の4人は公園で遊ぶことになっていた。


「あっ、もう着いちゃった。早いなぁ。じゃあ、バイバイだね」

「うん、バイバイ。また明日」

「また明日」


そのままオレはゆいぼんに背を向けて歩き出す。

1歩、2歩と着実にアスファルトにスニーカーの底をつける。

地面を蹴る足が重い。

このままでいいのか。

謝らなくて、否定しなくていいのか。

オレの胸に溜まっていく黒いもやをオレは溜め続けるのか。

いや、そんなの...ダメだ。

オレは立ち止まって後ろを振り返った。