「なぁ、風早先輩のさっきのシュート、めちゃくちゃかっこよかったよな!」
どこからか突然、しゃがみ込んだあたしの耳に飛びこんできた声。
「……!」
今の声……。
“風早先輩”という単語に反応したあたしは、素早く立ち上がって踊り場の窓から外を覗く。
すると、思った通り、サッカーの練習着を着た男の子が二人、すぐ下にある水道のところで怪我の手当てをしていた。
風早先輩って言ったってことは、あたしと同じ一年生だ。
「ああ。っていうかさ、なんで部活に入んないんだろ…。あれだけサッカー上手けりゃ二年だとしてもすぐにスタメンに入れそうなぐらいなのに」
「確かに、そうだよな。でも実際は俺達一年に教えるためだけに助っ人としてくるだけ」
「もったいないよなー…。ま、あんな上手い人に教わってるだけ得だけどさ…」
「なあなあ!今からでも誘ったら入ってくれねぇかな」
「…いや、それは無理だな。去年三年の先輩達がどれだけしつこく誘っても一度も首を縦に振らなかったらしいから。助っ人としてくるのをオーケーしてくれたのもまぐれみたいなものだって先輩が言ってたしな…」



