「…わかるよ。岩永さん、わかりやすいし…、それに。好きな子のことだから」
声は少し震えていたけれど、その言葉を言うのに迷いは感じられなかった。
……おそらくというか、絶対に奥村くんに悪気はなかったのだと思う。
彼はきっと思ったことをそのまま言っただけだ。
それでも、その言葉はあの日大好きなきみから放たれた言葉に辛くて悲しくて苦しくて、それでいてやるせなくて、一人隠れて泣いていたときの記憶を意図も簡単に蘇らせた。
“好きな子のことだから”
奥村くんの言いたいことがわからないわけじゃない。
───けれど、ならあたしは?
ずっとずっと一番そばにいたはずなのに、ある日突然
『俺、お前のこと嫌いになったから。
だから、もう幼なじみやめる』
そう言われてしまったあたしは……?



