「……そうだね。確かに今日は雲もほとんどなくて綺麗だね」
花菜ちゃんはゆっくり立ち上がると、少し窓を開けた。
「…わ、風が気持ちいい……」
窓の外から吹き込んできた新緑の風が肩下くらいまで伸ばした髪をサラサラと揺らす。
「…あれ、そういえばあたし達以外教室にいない?」
しばらく自分の世界に入っていたから気づかなかったけど、今教室にいるのはあたしと花菜ちゃんだけだ。
「まあ、一時間目は体育だからね。しかも、うちのクラス、遅刻しないように早めに行動する人多いし」
特に焦る様子もなくさらりと言ってのけた花菜ちゃんに、あたしの方が焦る。
「…ご、ごめんね、あたしが考えごとしてたばっかりにっ…。それで花菜ちゃんが遅刻しちゃったりしたら大変だよ…!」
「佑羽ったら慌てすぎ。あと五分もあるんだし、大丈夫だよ」
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結局花菜ちゃんの言った通りに後一分を残して間に合って、そこまで全力ダッシュしなくてもよかった、とちょっぴり後悔した。
どうやらそれが顔に出ていたみたいで、体育の授業中花菜ちゃんにからかわれたけれど。



