「おはよ」
「……」
「あ?なんだよ、じろじろ見て」
「お、おはよう……」
1日顔を合わせなかっただけなのに、なぜか気まずい。
何も後ろめたいことなんてないのに。
挨拶をするだけで精一杯とは、数ヶ月前に逆戻りしてしまったみたいだ。
すぐに机に目線を落とし、教科書やノートを広げ、自習のポーズを取る。
なのにいつものように集中出来ない。
ペンを持つ手が微かに震える。
手のひらが変な汗でじわりと湿り気を帯びる。
目は問題文を追っているのに、頭に全然入って来ない。
ああ、最悪だ。
変に意識しすぎているみたいで自分が気持ち悪い。
本当、自意識過剰もいいところだ。
「千鶴」
「……」
「おい、千鶴」
「……うん」
「集中出来てないなら、ちょっとこっち来いよ」
隣を見ると、燦がベランダを指さしてわたしの目を見据えている。


