「千鶴、美味しかったわあ」
「ああ、月見団子?」
「うん。お店の味みたいだったわ」
「それは言いすぎだよ」
「そうかしら。
でもまた作ってね、お母さん楽しみにしているわ。
じゃあお母さん寝るから」
「うん、おやすみ」
「早く寝るのよ」
「わかってる」
「おやすみ」
パタン、とドアが閉まるのを確認してわたしも自分の部屋に戻る。
お母さん、疲れているんだ。
まだ早い時間だけれども布団に入ってしまうお母さんにテストが近いことは言い出せなかった。
こんなことを言ったら余計に根詰めてわたしが勉強しないように言わせてしまうかもしれない。
疲れて帰ってくるのに心配させるようなことは出来ない。
だけど黙って夜遅くまで勉強をするわたしを誰が喜んでくれるだろう。
何となく今日ははかどる気がしなくて早めに布団に入ったものの、結局勉強していないという不安で上手く寝付けなかった。


