「わあ、美味しそう」
「本当?よかった」
「なんだか甘いいい匂いがするわね」
「あ、月見団子作ったんだ。
そろそろ十五夜だから」
「じゃあデザートってことね」
「うん」
「いただきます」
食器が机に置かれたり、箸を取る音だけがする。
外は風もなく、不気味なほどに音がしない。
こういう静かな夕食がわたしは好きだ。
無理に話す必要もない、ゆったりと流れるような時間が1日のうちでいちばん落ち着く。
時折お母さんが学校のことを聞いてきたらそれに答えるくらいだ。
わたしに友達が出来てから、お母さんは心なしか嬉しそうにわたしの話を聞く。
やっぱり親にとっては娘に友達がいることは安心するのかもしれない。
そう思うと、今までのらりくらりとその手の話をかわしてきたのが申し訳ない。


