やばい、頭打つ、と思った。
理由お母さんに聞かれたら嫌だなあなんて呑気に考えていた。
だけど、わたしの頭は痛くなかった。
瞑っていた目をゆっくりと開けると、間近に燦の顔があった。
……ああ、わたしやっちゃった。
こんなはずじゃなかったのに。
もっと今野さんとか河合さんみたいに、明るく、恥ずかしがらずに、軽く、伝えるはずだったのに。
絶対燦に嫌な思いさせたし、怪我させちゃった。
「……ごめん、ね」
「……っ」
「ごめんね、怪我したよね。
わたしが、手なんか引いちゃったから。
全然周り見てなかった……」
本当にごめんなさい、と言おうとした時、燦が上半身を起こしてわたしの目をじっと見た。
「それ、やめとけよ。
まじでやばいから」
それだけ言ってわたしを起こしてくれた。


