「……悪かった。まだ早かったな」
「……大丈夫」
「全然大丈夫じゃないだろ。
ほら、眼鏡ずれてる」
「あ……」
わたし、全然余裕がない。
帰れるかな……。
「千鶴、本当免疫無さすぎ。
無防備すぎる」
どういうことだろう。
燦の言うことはいつも難しい。
「ま、気をつけろよ。
あ、夕日だ」
「……本当だ。」
「これを見せたかったんだよ」
「ありがとう」
笑いかけると、顔をそらされた。
やっぱり、難しい。
「最近楽しそうだね」
「そうかな」
「うん、千鶴の表情が豊かになった気がする。
毎日楽しそうね」
「うん、楽しいよ」
初めて心から楽しいと思える生活を今のわたしはしていると思う。
これも燦と今野さんと河合さんのおかげだ。
今はまだ照れくさいから出来ないけれど、いつか3人を家に連れて来たい。
そんなわがままを願ってしまうほどわたしは浮かれていた。


