……どうしよう。
何も話せない。
この状況は、何がどうで、どうなって……。
なぜ、わたしの耳元に黒髪が……。
これは、そういうことで……。
だけど、不思議と嫌じゃない。
心臓がこのままおかしくなっちゃうんじゃないかとは思う。
「……千鶴?」
「……っ」
「千鶴?怒ってるか?」
「……怒って、ない。
ただ……」
「ただ?」
「この状況、……心臓がもたない」
「ははっ」
「え?」
「千鶴の口から許すって出るまでこうしているつもりなんだけど」
「わ、分かった!
いいよ、あの、もう許しているから……。
だから離して……」
それで何とか離れてくれたけれど、これはこれで恥ずかしい。
突然のことで、支えがなくなったわたしはその場にへなへなと座り込んでしまった。
なんで燦は平気なの……。


