「……じゃあ、こうする」
見上げると、夏川くんがふわっと笑っていた。
「燦って呼んで」
名前を聞いた瞬間、雲に隠れていた太陽が顔を覗かせ、世界をオレンジ色に塗り変えた。
夏川くんは、すごい。
太陽みたいな人だ。
見た目じゃなくて、少し破天荒な性格とか優しいところも全部含めて、太陽みたい。
「分かった。……燦」
「よし」
「ふふっ」
「なんだよ」
「なんか、おかしくって」
「ふうん」
歩き出す時、またわたしの手を取り、わたし達は夕日に向かった。
今日という日を、わたしは忘れないだろう。
1人で歩きながら燦、と呟いてみると口の中が暖かくなった気がした。


