気付くと、わたしは答えていた。
「……はい、お願いします」
そう言うと、笑われた。
「泣きすぎ。腰が抜けるほどびっくりしたのか。
ほら、掴めよ」
そう言って腕が差し出される。
それを頼りに立ち上がると、そのまま温もりが腕から手のひらに落ちてきた。
どうしよう。恥ずかしい。
だけど、嬉しい。
たぶん。
いや、きっと、間違いない。
わたしはずっと、夏川くんが好きだったのだ。
あの夕方の教室で、黄金色の光に包まれた横顔を見た時から、わたしは夏川くんに恋をしていたのだ。
馬鹿だったなあ。
今さら気付くなんて。
本当は全部、嬉しかった。
話しかけてくれたことも、勉強を頼まれたことも、夏祭りで会ったことも、何もかも。


