……なんだろう。
この、微妙な空気は。
居心地が悪い。
「……ねえ、どうしたの?」
「藤野に、言いたいことがある」
「……え」
人違いなんてことはないだろうか。
わたしに何を言いたいんだろう。
そう思っていると、夏川くんがわたしの方へ振り返り、じっと見下ろしている。
卑怯で小心者のわたしは床を見る。
「……こっち見ろ」
「……」
「……こっち見ろ」
「……りだよ」
「あ?」
「……恥ずかしくて、無理……」
いったいわたしは何を口走っているのか。
こんなのまるで勘違いしているみたいだ。
だけど、顔が赤いことは絶対に見られたくない。
ぐっと下を見ていると、手が伸びてきた。
そのままわたしの顎を上げ、顔を合わせる形になった。
……ああ、やっぱり綺麗だ。
黒髪が夕方の光によく映える。
輪郭が魔法にかかったようにキラキラしている。


