慌てて後をついて行くと、カウンターで本を読んでいた先生が顔を上げ、意味ありげに笑った。
「若いっていいわねえ」
「え……?」
「はい、さようなら」
答える暇もなく、先生はドアを閉めてしまった。
「行くぞ」
「……あ、うん」
わたし達しかいない。
夏休みだから当たり前だけど、そのことに緊張する。
少しだけ校内がはちみつ色に染まっている。
金色の校舎って綺麗だなと思いつま先を見つめ、歩いていると目の前に影ができた。
「……何?どうしたの?」
何となく夏川くんの顔を見られない。
わたしの顔はまだ赤い気がする。
未だに心拍数がとんでもないことになっているし。
加えて眼鏡の縁を触り、焦っているのがばればれだ。
ああ、本当、この挙動不審になる性格治ってほしい。


