「んん……」
ちょっと寝すぎてしまったかもしれない。
体が重い。
今日は眠れなくなるかも、と時計を確認しようと顔を上げた。
「……っ!」
「図書室。静かにしろ」
これは。……これは、どういうこと?
口を手で覆われている。
騒ぐな、ということなんだと思うけれど、恥ずかしくて叫んでしまいそうだ。
まず、いつから夏川くんはいたのか。
そしてわたしは寝ているところを見られたかもしれない。
……全然、分からない。
どうしたらいいのかわからず、わたしはしばらく口を夏川くんの手で覆われている状態で中途半端に上半身を起こしていた。
「……帰るぞ」
すっと手が離れると、止めていた呼吸が戻ってきた。
……どういうこと?
「いつまでそんな格好してんだよ。
最終下校だろ、帰るぞ」
耳元で言われ、何かに取り憑かれたようにぼんやりと片付け、わたしが鞄を持つと、夏川くんはスタスタと歩き出した。


