「……る?千鶴?」


「えっ、何?」


「水出しっぱなしよ、大丈夫?」


「……あ、ああ、本当だ。

ごめん、気を付けるね」


「ぼーっとしていたみたいだけど、具合悪いの?」


「平気だよ」


「……ならいいけど。

夏休みなのに忙しくてあんまり家事代わってあげられなくてごめんね。

自分の時間も優先していいのよ?」


「大丈夫だよ、暇だから家事やってるだけ。

お母さんもちゃんと休まないと、ただでさえ暑いんだから。

宿題やってくるね」





こういうお互いをひたすら気遣い合う会話がわたしはどうも苦手だ。




どこかご機嫌を取っているようで、居心地が悪い。




適当なところで会話を切り上げ、自分の部屋に逃げるように戻る。




……だめだ。




家事をやっているうちに忘れられるかと思ったけれど、ますます存在感が増してしまった。




色とりどりの野菜に花火を重ねてしまい、お母さんの水色のシャツにラムネを思い出した。




……どうすれば、忘れられるんだろう。