「……それ、欲しいの」





何かの間違いだと思った。




だけど、振り向くと、いつものぶっきらぼうな物言いをして立っている、夏川くんがいた。




わたしの手元を指さして、怪訝そうな表情を浮かべていた。





「そのビー玉、欲しいの」


「……あ」


「は?それ、欲しいの」


「……や、欲しいっていうか」


「手ぇ伸ばして見てんだから欲しいんだろ」


「……」





わたしが黙り込んで色とりどりの硝子玉を見ていると、上からため息が聞こえた。




わたしは背が低いので、見上げる形になる。




でも、その顔は想像に反してそれほど怖くなかった。



愛想良く、屋台のおじさんに話しかけようとしている。





「なあおじさん、これ1回やらせて」


「あいよ、300円だけど兄ちゃんのかっこよさに免じて200円に負けてやるよ」


「うっす」





ちょっと待ってよ、わたしがついていけてないんだけど。




割引までしてもらって申し訳ない。