「悪いな、勉強中に」
「いえ、大丈夫です」
「あのな、夏川が今日休みなんだ。
だから事務連絡とか授業中のこととか伝えておいてくれないか?」
相変わらず自分で連絡しようとしない態度に呆れるものの、慣れた仕事になったから機械的に了承する。
「悪いな、いつも。先生もなかなか忙しくて。
しっかしまあ、夏川はよく休むよなあ」
「そうですね」
「今月だけでもう半分くらい休んでいるんじゃないか?
こんなに休むやつなんて聞いたことがないな」
わたしが大人しい生徒であるのを良いことに先生の喋りは止まらず、一方的な会話は授業が始まる直前まで続いた。
教室に入ると数人がわたしを労うような、憐れむような目を向けてきた。
授業が始まると、教室には黒板にチョークを当てる音と筆記音と先生の声と、雨音が満ちた。
隣の席は空いており、そこだけ寂しそうな空気をまとっていた。


