「さっきからなんだよ」
「…え」
じっと横顔を見つめていたせいで、つい反応が遅れてしまった。
「俺の顔、なんか付いてる?」
顔を指さしながらわたしを睨みつけるその目には単純に恐怖を感じた。
「…何も、ないよ。…あの、ごめんね」
不安になった時の癖でメガネの縁を指で押し上げ、問題に頭を切り替えた。
それでも、赤くなる頬は全く隠せない。
見ていたことを気付かれていたとは全く思わなかった。
そう思うと、わたしが綺麗だとかずっと見ていられると思っていたことも見透かされていた気がしてならない。
わたし達はただ勉強を教え、教わっているだけで何もない。
それなのに、どうしてわたしだけこんなにうろたえているのだろう。
「ああ、なるほど、分かった」
「…よかった」
「お前、教えるのわかりやすい」
面と向かって教えるのは初めてだったけれど、上手くいったらしい。
あの夏川くんから褒め言葉を貰えるとは思ってもみなかった。


